痛みは侵害受容性疼痛(体性痛・内臓痛)、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛に分類される。
こんにちは!薬剤師のMoKaです。
痛みの種類はいろいろあり、痛みに応じた鎮痛薬の使用やケアをしないと効果がないばかりか、副作用が出現し患者さんが辛い思いをする可能性があります。
国際疼痛学会は病的な痛みとして、下記のように分類しています。
- 侵害受容性疼痛
- 神経障害性疼痛
- 痛覚変調性疼痛
単に痛いっていうだけではないんだね
患者さんの痛みをしっかり和らげるために、今回は痛みの分類を勉強しましょう!!
侵害受容性疼痛は、組織の損傷などにより末梢神経終末の侵害受容器が熱や機械的・化学的刺激を受けるために出現する痛みのことです。
侵害受容器とは、Aδ線維やC線維といった末梢感覚神経(1次ニューロンといいます)の自由終末に存在し、温度刺激や機械・化学的刺激などの侵害刺激を受容し、局所的な脱分極を発生させ、活動電位を発生させます。
Aδ線維は有髄で伝導速度が速く局在明瞭な刺激を伝導し、C線維は無髄で伝導速度が遅く局在不明瞭な鈍い刺激を伝導します。
侵害受容性疼痛は、体性痛と内臓痛に分けられます。
体性痛
皮膚や骨、関節などの体性組織が機械的刺激(切る、刺す、叩くなど)によって発生する痛みです。
痛みの特徴は、痛い場所が明瞭で鋭い痛みとなります。
例として、術後の創部痛やがんの骨への転移による骨転移痛などがあります。
皆さん、転んで膝を擦り剥いたことがあると思いますが、あれが体性痛です。
内臓痛
内臓は体性組織とは違い、切る、刺すなどの刺激では痛みは起こりません。
胃、大腸、胆管、尿路、膀胱などの管腔臓器は炎症や狭窄による内圧の上昇、
肝臓や腎臓では周囲への被膜への波及や臓器腫大による伸展、
膵臓は周囲の神経叢に炎症の波及や腫瘍浸潤、腸間膜・腹膜、胸膜では炎症の波及や腫瘍浸潤、伸展が生じた時に痛みが引き起こされます。
内臓は体性組織よりもC線維の割合が多く、さらに複数の脊髄領域によって支配されていることから、局在が不明瞭で広範囲に痛みが感じられます。
また、臓器から離れた皮膚や筋肉に関連痛といわれる痛みが発生することもあります。
関連痛とは?
病巣の周囲や病巣から離れた場所に発生する痛みを関連痛といいます。
内臓のがんにおいても病巣から離れた部位に関連痛が発生することがあります。
例えば、上腹部内臓のがんで肩や背中が痛くなること、腎・尿路の異常で鼠径部が痛くなることです。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる痛み」と定義されます。
がん患者での神経障害性疼痛は、がん細胞の増大や浸潤に伴う神経線維の圧迫や損傷によって引き起こされ、痛覚過敏やアロディニア、電撃痛、灼熱痛、しびれ感、感覚異常などの特徴的かつ持続的な病態を示します。
神経障害性疼痛は体性痛や内臓痛と異なり侵害受容器を刺激していないため、NSAIDsやオピオイドの効果が十分に期待できない難治性の痛みです。
(神経障害性疼痛にNSAIDsやオピオイドが効果がないということではありません)
アロディニアとは?
通常では痛みを起こさない刺激(「触る」など)によって引き起こされる痛みのことをアロディニアといいます。
似たような言葉に痛覚過敏がありますが、これは痛覚に対する感受性が亢進した状態で、通常では痛みを感じない程度の痛みの刺激に対して痛みを感じることです。
痛覚変調性疼痛
末梢の侵害受容器の活性化を引き起こす組織損傷や炎症がなく、体性神経系の疾患や障害の証拠がないにもかかわらず生じる痛みのことです。
詳細なメカニズムは不明で、不安や恐怖などの社会心理的ストレスにより脳神経回路に変化が生じていると考えられています。
向精神薬や認知行動療法などの精神医学的な介入が必要なことがあります。
まとめ
今回は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛についてまとめてみました。
これから緩和ケアについて学んでいこうとしている方の助けになれていればうれしいです。
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