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こんにちは!!薬剤師のMoKaです。
緩和ケアでは抗精神病薬が使用されることがありますが、多くの薬剤師は抗精神病薬がよく使用される精神科での勤務経験が少なく苦手意識を持っているのではないでしょうか?
また、精神疾患を持った患者さんに緩和ケアを提供する機会が増えているため、抗精神病薬の知識が必要となることが多くなると思います。
今回は苦手意識が多いかもしれない、緩和ケアで使用される抗精神病薬について解説します。
抗精神病薬とは?
抗精神病薬は主に統合失調症に適応を持つ薬で薬理作用はドパミン受容体に作用します。
ドパミン受容体の中でも、ドパミンD₂受容体を遮断します。
また、ドパミンD₂受容体だけではなく、薬によってはヒスタミンH₁やアドレナリンα₁受容体などの受容体にも作用し、効果や副作用の出方に違いがあります。
抗精神病薬は定型(第一世代)と非定型(第二世代)に分けられます。
定型抗精神病薬では錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用が問題となったため、そのような副作用が少ない非定型抗精神病薬が開発されました。
抗精神病薬と言葉が似ている薬に向精神薬があります。
向精神薬は、中枢神経系に作用し、生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称です。
抗精神病薬は向精神薬のカテゴリーの1つです。
緩和ケアで抗精神病薬が使われる場面は?
悪心・嘔吐とせん妄です。
悪心・嘔吐
悪心・嘔吐にどうして抗精神病薬が使用されるのでしょうか?
悪心・嘔吐は何らかの原因で嘔吐中枢が刺激されるために起こります。
悪心・嘔吐の発生機序は複雑ですが、ポイントは化学受容器引金帯(CTZ)と呼ばれる部位です。
CTZは第4脳室底にあり、血管が豊富で血液脳関門が存在しないため、血液や脳脊髄液中の代謝物、内分泌ホルモン、薬物、毒素などさまざまな催吐性刺激を直接受けることができます。
また、前庭器の刺激、消化管など末梢性刺激の嘔吐中枢への中継点でもあります。
CTZには、ドパミンD₂、セロトニン5ーHT₃、ニューロキニンNK₁受容体が多く分布しており、これらの受容体を拮抗することで悪心・嘔吐を抑制することができます。
制吐薬としてよく使用されるドンペリドンやメトクロプラミドもドパミンD₂受容体を遮断します。
せん妄
せん妄は、身体的異常や薬物が原因で急性に意識障害を起こし、失見当識などの認知機能障害や幻覚妄想、気分変動などのさまざまな精神症状が出現します。
では、せん妄に対してどうして抗精神病薬が使用されるのでしょうか?
せん妄の病態生理はいまだに不明ですが、過剰なドパミンがせん妄発症に関係していると言われています。
また、せん妄発症にはドパミン以外にもアセチルコリンやセロトニン、ノルアドレナリンも関与していると言われているため、そのような受容体にも作用する抗精神病薬が使用されます。
抗精神病薬の主な適応症は統合失調症でせん妄は適応外ですが、厚生労働省からの通知(平成23年9月28日 保医発0928第1号)でハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、ペロスピロンは器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性の場合には適応外を認めるとされています。
緩和ケアで使われる抗精神病薬3選
緩和ケアでよく使用される抗精神病薬のうちハロペリドール、リスペリドン、クエチアピンの3つを解説します。
ハロペリドール
- 定型の一種
- 主にドパミンD2受容体を遮断
- 幻覚・妄想・興奮などの症状に使用される
- 傾眠作用が弱い
- 睡眠目的で使用するも効果が得られず、繰り返し投与することで過量投与になり、副作用(アカシジアなど)が出現することがある。
- 注射剤は5mg/Aと高用量のため注意
リスペリドン
- 非定型の一種。
- SDA(セロトニン・ドパミン遮断薬)。
- 定型より錐体外路症状が少ない。
- 肝臓でCYP2D6とCYP3A4によって活性代謝物のパリペリドンに代謝される。
- パリペリドンはは主に尿中排泄。
- 未変化体の半減期は約4時間だが、パリペリドンは約20時間のため、腎障害患者では蓄積に注意しましょう。
クエチアピン
- 非定型の一種。
- MARTA(多受容体作用抗精神病薬)。
- 錐体外路症状が定型より少ない。
- 作用時間が短いため、持ち越しが少ない。
- 抗ヒスタミン作用により、鎮静作用がある。
- 夜間せん妄に対して使用頻度が高い。
- 糖尿病患者(既往も含む)には禁忌。
まとめ
今回は緩和ケアでよく使用される抗精神病薬について解説しました。
今回の記事では以下の3点は絶対抑えましょう。
抗精神病薬は緩和ケアでは、悪心・嘔吐やせん妄に使用される
ハロペリドールとリスペリドンは睡眠作用は弱い
クエチアピンは糖尿病の既往を確認
患者さんの症状を緩和するために、各薬剤の特徴を理解し、また使用中は薬効の評価や副作用のモニタリングを行うようにしましょう。
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