【緩和ケア】オピオイドの持続皮下注について

緩和ケア

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オピオイドの持続皮下注は質の高いがん疼痛治療を提供するために欠かせない投与方法です

こんにちは、薬剤師のMoKaです。

痛みに苦しむがん患者さんにとって、オピオイド鎮痛薬は欠かせない薬です。

しかし、経口投与や経皮投与ができなくなった場合静脈路の確保が難しい場合はどうすればいいのでしょうか?

そんなときにオススメなのがオピオイドの持続皮下注です。

持続皮下注は皮下にオピオイド鎮痛薬を注入する方法です。

この記事では、オピオイドの持続皮下注の特徴や注意点などについて解説します。

がん患者さんの痛み(がん性疼痛)について

痛みとは、「組織の損傷や傷害の際に表現される不快な感覚および情動体験」と定義されています。

組織の損傷や傷害だけではなく、心理社会的な要素やスピリチュアルな要素などによって痛みを感じやすくなることもあります。

がん患者さんはがんによって神経を圧迫されたり、がんに罹患したことで心理的に苦痛を感じたりするので、痛みを体験することがとても多いです。

がん患者さんの痛み(がん性疼痛)には、がんによる痛み(がんの浸潤や転移に伴う痛み)、がん治療による痛み(手術療法、化学療法、放射線療法など抗がん治療に関連する痛み)やがん・がん治療と無関係な痛み(基礎疾患や廃用・老化に関連するもの、慢性痛など)に分類されます。

がん疼痛緩和の基本は、速やかな治療の開始十分な副作用対策患者さんが満足できる痛みからの解放です。

がん患者さんのQOL(Quality of Life)向上のために痛みの治療はしっかり行う必要があります。

がん疼痛治療

がん自体による痛みは、オピオイド鎮痛薬を中心として薬物療法が基本となります。

オピオイドとは、オピオイド受容体に作用する薬のことで、オピオイド鎮痛薬にはモルヒネやオキシコドン、ヒドロモルフォンなどがあります。

オピオイド鎮痛薬の投与方法

オピオイドの投与方法は経口投与が基本ですが、患者さんの病状に合わせて直腸内投与、経皮投与、持続皮下注、持続静注、経口腔粘膜投与を選択することができます。

がん疼痛治療の問題

がん疼痛治療が開始されたときは経口薬が内服できましたが、次第に病状が進行し内服が難しくなってくる患者さんがいます。

また、オピオイド鎮痛薬が開始になっても、オピオイド鎮痛薬による副作用悪心・嘔吐など)のため内服が難しくなる患者さんもいます。

このような場合、非経口投与でオピオイド鎮痛薬を投与することになります。

貼付薬は簡便ですが、効果発現に時間がかかります。坐薬は効果発現は速いですが、経肛門的に投与することが患者さんにとって苦痛となる場合もあります。

そこで選択されるのが、持続皮下注(または持続静注)です。

持続皮下注のメリット

持続皮下注でオピオイド鎮痛薬を投与することにはいろいろとメリットがあります。

持続投与は薬物の効果が一定で、投与量の微調整が可能です。

シリンジポンプなどを用いて、時間当たりの投与量を設定し投与します。

持続皮下注は静脈路を確保しなくてよいため投与は簡便で、針を抜いてしまっても再度刺すことができます。

患者さんの中にはなかなか静脈路が確保できず、何度も針を刺すことになって痛い思いをしたり、せっかく静脈路を確保できたのに暴れて針が抜けてしまったりする方もいるので、そのような場合には持続皮下注は苦痛を軽減でき簡便な方法だと言えます。

また、持続皮下注は静注に比べて血中濃度がすぐに上がらないので、効きすぎや副作用の心配が少ないのもメリットです。

具体的な方法

持続皮下注の刺入部位は胸部、腹部、大腿、上腕の皮下で皮下脂肪組織が厚い場所(皮膚をつまんだときに指と指の間に幅が1㎝以上ある)です。

皮下脂肪組織へ皮膚とほぼ平行に刺入し、フィルムドレッシングで覆います(筋肉に到達しないように)。

針の交換は刺入部の発赤がなければ、1週間に1回程度でよいです。

持続皮下注の注意点

持続皮下注にも注意点があります。

皮膚からの薬物の吸収は一般的に1mL/時間が上限と言われています。

ですので、持続皮下注は大量のオピオイド投与には向いていません。

刺入部に痛みや発赤、硬結など皮膚に異常が出現する可能性があるため観察が必要で、異常が発見された場合は別の部位に刺しなおす必要があります。

経口薬からの切り替え

オピオイド鎮痛薬を持続皮下注で投与しようとしたとき、今までオピオイド鎮痛薬を使用していない患者さんが使う場合経口薬などのオピオイド鎮痛薬を使用していた患者さんが切り替えて使う場合があります。

オピオイド鎮痛薬未使用の患者さんでは基本最小量から投与するのですが、経口薬などのオピオイド鎮痛薬を使用していた患者さんが使う場合は、前に使用していたオピオイド鎮痛薬から変更後のオピオイド鎮痛薬の量を決めて投与する必要があります。

また、切り替えるタイミングも重要です。

換算量

ここでは経口薬から注射薬へ変更する場合を解説します。

経口薬から注射薬へ切り替える場合、同量を用いると多すぎるため減量して投与します。

経口モルヒネからモルヒネ注であれば1/3-1/2量

経口オキシコドンからオキシコドン注であれば3/4量

経口ヒドロモルフォンからヒドロモルフォン注であれば1/5量

として投与します。

ただし、換算量はあくまで目安ですので、切り替え後の鎮痛効果や副作用の出現などを必ず確認し投与量を調整することが重要です。

タイミング

ここでは経口薬(1日2回の徐放性製剤と1日1回の徐放性製剤)から注射薬への切り替えタイミングについて解説します。

1日2回の徐放性製剤では最終内服から12時間後に注射薬を投与開始

1日1回の徐放性製剤では最終内服から24時間後に注射薬を投与開始

どちらの製剤も次回の予定内服時間から注射を開始するということになります。

まとめ

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今回の記事では、オピオイドの持続皮下注について解説しました。

緩和ケアで持続皮下注は緩和ケア病棟やがん拠点病院では一般的に行われているようですが、一般の病院や多くの在宅医療では認知度は低いようです。

がん患者さんが最期までQOLを維持し、希望する場所で療養するためには、持続皮下注を積極的に利用し質の高いがん疼痛治療を継続して行う必要があります。

オピオイドの持続皮下注がもっと広がり、患者さんの痛みが軽減されることを願います。

参考書籍
日本緩和医療学会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版,金原出版,2020年
余宮きのみ:がん疼痛緩和の薬がわかる本,医学書院,2016年
医療用麻薬適正使用ガイダンス,厚生労働省,2017年

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