こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。
OICって何ですか!?
OICとはオピオイド誘発性便秘症のことです。
今回の記事では、オピオイド誘発性便秘症について解説します。
この記事はこんな人にオススメ
- オピオイド誘発性便秘症について知りたい
- 忙しいのでさっと勉強したい
- ナルデメジンてどんな薬か知りたい
オピオイド誘発性便秘症について超簡単にまとめたので、1分くらいで読める記事だと思います。
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はじめに
オピオイド誘発性便秘症(Opioid-induced constipation:OIC)とは、オピオイドを使用することによって引き起こされる便秘のことを指します。オピオイドは強力な鎮痛薬であり、がんや手術後の痛みを管理するために広く使用されています。しかし、これらの薬物は腸の動きを遅くする副作用があり、これが便秘を引き起こします。
OICの原因
オピオイドは脳や脊髄に作用し、痛みの伝達を遮断します。しかし、オピオイドは同時に腸の神経にも作用し、腸の動きを遅くします。これが便秘を引き起こす主な原因です。
OICの症状
便秘の症状には、排便の頻度の減少、硬い便、排便困難、残便感、腹痛などがあります。これらの症状は日常生活に影響を及ぼし、生活の質を低下させる可能性があります。
OICの診断
OICの診断は、主に患者の症状とオピオイドの使用歴に基づいて行われます。
医師は問診と腹部診察を行い、他の便秘の原因を排除します。
便の性状を評価するためにBristol stool form scale(BSFS)が広く用いられている。
①と②は便秘、⑥と⑦は下痢であり、通常便は③~⑤です。
OICの治療法
OICの治療には、便秘薬の使用と生活習慣の改善が含まれます。
便秘治療薬として大腸刺激性下剤や浸透圧性下剤などを使用します。
最近では、新たな治療薬であるナルデメジントシル酸塩が登場し、OICの治療に新たな選択肢ができました。
便秘は生活習慣と関係があるため、生活習慣を見直し改善する必要があります。特に水分や食物繊維の積極的な摂取や運動は重要です。
OICの改善にはオピオイドスイッチングが有効な場合もあります。オピオイドスイッチングとは、今使っているオピオイドを別のオピオイドに変更することです。モルヒネやオキシコドンよりもフェンタニルは便秘が起こりにくいと言われています。モルヒネやオキシコドンを使用中に便秘が起こった場合にはフェンタニルへのオピオイドスイッチングもOIC対策の1つです。
ナルデメジンについて
オピオイドは中枢のオピオイド受容体に作用することで鎮痛効果を示す一方で、末梢(腸管)のオピオイド受容体に作用することで便秘を起こします。
ナルデメジンは末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(peripherally-acting μ-opioid receptor antagonist:PAMORA)です。
名前の通り、ナルデメジンは中枢のオピオイド受容体は拮抗せず、末梢(腸管)のオピオイド受容体のみ拮抗します。
ですので鎮痛作用は減弱させずオピオイドによる便秘を解消してくれます。
塩野義製薬のスインプロイク錠®︎患者向け指導せんより抜粋
ナルデメジンはモルヒネやオキシコドンなどの強オピオイドだけでなく、トラマドールなどの弱オピオイドによる便秘にも使用することが可能です。整形外科領域でトラマドールやトラマドールとアセトアミノフェンの配合薬を使用している場合にも、ナルデメジンは使用できます。
注意点ですが、ナルデメジンはオピオイド使用前からある便秘(一般の便秘症)には効果がないことです。オピオイド使用中に便秘があるという理由だけでナルデメジンを使用しても、その便秘がオピオイドによる便秘でなければ効果がありません。オピオイド使用前に便秘の有無はチェックしましょう。
もう1つの注意点は脳腫瘍(転移性も含みます)の場合です。脳腫瘍により血液脳関門が機能しなくなり、通常であれば中枢で作用しないナルデメジンが中枢で作用します。するとどうなるでしょう?ナルデメジンが中枢のオピオイド受容体をブロックし、鎮痛効果が弱くなってしまいます。ナルデメジンを使用する前には、がん種や既往歴も確認しましょう。
まとめ
- オピオイド誘発性便秘症(OIC)はオピオイドを投与することで起こる便秘症で、強オピオイドだけでなく弱オピオイドでも起こる。
- ナルデメジンはOICに適応をもつ薬で、中枢のオピオイド受容体には作用せず、末梢にのみ作用する。
OICはオピオイドを使用する患者にとって重要な問題です。OICにより痛みが増幅したり、生活の質が低下してしまう可能性があります。OICを改善させて安心してオピオイドを使用できるようにしましょう。
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