要注意‼︎フェントス®︎テープの規格と吸収量について薬剤師が解説

緩和ケア

緩和ケアでよく使用されるフェントス®︎テープには0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mg、8mgと規格がありますが、この数値は体内に吸収される量とは異なります。

このことを知らないと重大なミスに繋がるかもしれません。

こんにちは。病院薬剤師のMoKaです。

みなさん、フェントス®テープの規格と吸収量について考えたことありますか?

新人薬剤師
新人薬剤師

フェントス®テープ0.5mgを貼ったら、フェンタニルは0.5mg吸収されるに決まっているでしょう。

それ間違いです!!

フェントス®テープの規格と吸収量は違います(下図)。

今回はフェントス®テープの規格と吸収量について、緩和薬物療法認定薬剤師のMoKaが解説します。

こんな人にオススメ記事
  • フェンタニルについて知りたい
  • フェントス®︎テープの規格と吸収量について考えたこともない
  • フェントス®テープに関わることがある医療者

フェンタニルについて

まず始めに、予備知識としてフェンタニルについて解説します。

知ってるよという人は飛ばしてください。

フェンタニルの歴史

フェンタニルは1960年にベルギーで合成され、1960年代に欧米で使用が開始されました。

日本では1972年にフェンタニル注が販売開始。

がん性疼痛に対しては、2002年に貼付剤(デュロテップ®)が、2008年にはデュロテップ®MTが発売され、2010年には非がん性疼痛にも適応が広がりました。

また、2010年にフェントス®、2011年にワンデュロ®が発売。

2013年には、がん患者の突出痛に対するRapid-onset opioid(ROO)であるフェンタニル粘膜吸収剤(イーフェン®、アブストラル®)が発売されました。

フェンタニルはどんな薬?

フェンタニルはμオピオイド受容体に作用する強オピオイド鎮痛薬で、がん性疼痛や手術時の鎮痛に使用されます。

低分子量で脂溶性が高い(モルヒネの200~1000倍)ため、経皮吸収や経粘膜吸収に優れていることが特徴です。

フェンタニルは血液脳関門を容易に通過し、多くが中枢神経系に到達するため投与量はモルヒネなどに比べてはるかに少量ですみます。

主に肝臓でCYP3A4により不活性型のノルフェンタニルに代謝されるため、腎機能障害があっても使いやすいオピオイドです。

フェントス®︎テープについて

フェントス®テープはフェンタニルの経皮吸収型製剤で、1日1回毎日貼り変える薬です。

強オピオイドの中で貼付剤があるのはフェンタニル製剤だけですので、貴重な存在ですね。

フェントス®テープのメリットを解説します。

フェントス®テープのメリット
  • 使用方法が簡単で、内服できない場合に活躍
  • 長時間、一定した効果が得られる
  • 消化器系の副作用が少ない

フェントス®テープは貼るだけで良いので、内服が困難な高齢者でも使用することができます。

また、内服薬では毎日定期的に服用しても血中濃度の変動がありますが、貼付剤では持続して薬が一定に放出されるため、安定した効果が得られます。

貼付剤では消化管を通らずに血中に移行するため、吐き気や便秘などの副作用が少ないと言われています。

フェントス®テープのデメリットも解説します。

フェントス®テープのデメリット
  • 血中濃度の上昇が緩やかなので、早急な疼痛コントロールには不向き
  • 皮膚かぶれ
  • 剥がし忘れ

フェントス®テープは貼付開始してもすぐには効果が出ません。

血中濃度が安定するまで72時間以上必要ですから、早急に疼痛コントロールを行う場合には向いていません。

貼付剤はずっと貼り続ける必要があるので、皮膚が弱い人は皮膚かぶれが起きやすいです。

また、テープは1日1回貼り変えますが、時々前日のテープを剥がし忘れ新しいテープを貼ってしまうこともありますので、剥がし忘れには注意が必要です。

フェントス®テープはメリット・デメリットの双方ありますが、がん疼痛治療では重要な薬であることは間違いないです。

フェントス®︎テープの規格と吸収量

結論から先に言うと、フェントス®︎テープの規格と吸収量は違います。

フェントス®️テープには0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mg、8mgの規格があり、それぞれの定常状態における推定平均吸収量(フェンタニルとして)は0.15mg/日、0.3mg/日、0.6mg/日、1.2mg/日、1.8mg/日、2.4mg/日です。

例えば、フェントス®︎テープ0.5mgを1日貼付した場合、1日でフェンタニル0.5mgが体内に吸収されるわけではなく、フェンタニル0.15mgしか体内に吸収されません。

このことを知らないと、どんなことが起きるでしょうか?

がん疼痛治療ではとても強い痛みが出現した場合に、モルヒネやフェンタニルなどのオピオイドを使用します。

どのオピオイドを使用するかは患者さんの状態によって決定されますが、決めるための1つの条件として患者さんが薬を飲めるか飲めないかがあります。

薬を飲める場合は内服薬を使いますが、飲めない場合は内服以外の投与方法を選択するしかありません。

さらに患者さんの痛みがとても強く、早急に疼痛コントロールが必要な場合は、まず注射剤で疼痛コントロールを行うことが多いです。

注射剤で疼痛コントロールが行えた後、自宅に帰りたいけど注射のままでは帰れない場合に貼付剤へ切り替える方法があります。

そこで、フェントス®️テープの規格と吸収量の関係を知らないとどうなるかというと…

もし、フェンタニル注を1日0.5mg投与中の患者さんがフェントス®︎テープへ変更する場合、規格と吸収量が同じだと思っていたらフェントス®︎テープ0.5mgを1日1回1枚で開始します。

しかし、ファントス®️テープ0.5mgではフェンタニルが0.15mg/日しか吸収されませんので、フェンタニルの用量が不足してしまいます。

用量が不足すると患者さんの痛みが再び強くなり、患者さんに苦痛が生じてしまうかもしれません。

ですので、フェントス®️テープの規格と吸収量を知っておくことは、とても大切なことです。

是非、覚えておきましょう。

ですが、数値を全部覚えるの大変という方がほとんどだと思います(自分もです)。

そんな方は1つの規格と吸収量だけ覚えましょう。

自分はフェントス®️テープ1mgは0.3mg/日だけ覚えています。

あとは、比で計算していくだけなので、応用が利きます。

この方法も覚えておくと便利ですのでお試しください。

まとめ

今回は、フェントス®テープの規格と吸収量について解説しました。

フェントス®テープの規格と吸収量は違うことや違うことを知らないとどうなるのか、また規格と吸収量の覚え方などがご理解いただけたかと思います。

この記事が誰かの役に立っていれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料

フェントス®テープ インタビューフォーム

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