【スギ花粉症の舌下免疫療法】病院薬剤師が説明する薬の使用ポイント3選

薬剤師

辛いスギ花粉症。舌下免疫療法で症状が和らぐかもしれません。使用される薬について病院薬剤師が解説します。

こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。

今回の記事ではスギ花粉症の舌下免疫療法について解説します。

スギ花粉症は鼻水が止まらなかったり、眼が痒くなったりと辛いですよね。

また、花粉症に対して抗アレルギー薬を服用しても、あまり症状が改善されなくて効果が実感されないことや、副作用の眠気で眠たくなることもあります。

そんな症状で苦しんでいる人や薬の効果が少ない人の救世主が舌下免疫療法です。

舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法のひとつで、舌下(舌の下)に薬(アレルゲン)を投与する治療法です。

スギ花粉症の舌下免疫療法の薬が日本で使用されるようになった時から薬剤指導を行っているMoKaがスギ花粉症の舌下免疫療法について導入方法や薬を使用するときのポイントなどを解説します。

MoKa
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スギ花粉症の舌下免疫療法の薬が日本で使用されるようになった時から薬剤指導を行っているMoKaがスギ花粉症の舌下免疫療法について導入方法や薬を使用するときのポイントなどを解説します。

こんな人にオススメの記事
  • 医療者や舌下免疫療法について興味や関心があるスギ花粉症で悩んでいる患者さん
  • 舌下免疫療法がどのように導入されるか知りたい
  • 薬の使い方のポイントや注意点を知りたい

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スギ花粉症について

スギ花粉症とはスギ花粉をアレルゲンとするⅠ型アレルギー疾患です。

人の鼻では侵入してきた物質(抗原)を自分以外の物質(異物)と判断すると、これを無害 化しようとする反応(抗原抗体反応)がおこります。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまりな どの症状が出てくる病気をアレルギー性鼻炎と言います。花粉症は体内に入った花粉に対して 人間の身体が起こす抗原抗体反応です。つまり、体内に侵入した花粉を異物と認識し、この異 物(抗原)に対する抗体を作り、再度侵入した花粉を排除しようとする反応です。

花粉症環境保健マニュアル2022:環境省

スギ花粉症でお悩みの方は多いのではないでしょうか?

日本人のスギ花粉症有病率として38.8%(2019年)という報告があり、ほぼ3人に1人ということになりますので非常に多いです。

主な症状は鼻症状(くしゃみ、鼻漏、鼻閉、鼻の痒み)や眼症状(痒み、充血、流涙)、皮膚の痒み、咽頭の痒み、咳喘息あるいは喘息の悪化、睡眠障害、全身倦怠感などです。

花粉の飛散時期になると症状が出るとすぐには治まらず、とてもしんどいため仕事や勉強、家事などに影響がでます。

地域によって多少違いはありますが、スギ花粉の飛散が1月くらいから始まるので、ちょうど受験の重なるため、受験勉強や試験にも影響がでますね。

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2025年春花粉飛散予測

今年(2024年)の夏の猛暑が影響し、2025年春の飛散量は広い範囲で例年より多い予測がされています。

なぜ、夏の猛暑が花粉飛散量に影響するのでしょうか。

花粉は気温が高く日照時間の多い夏は、花芽が多く形成され、翌春の飛散量は多くなる傾向があります。

ですので、2025年春の花粉飛散量が多くなると予想されています。

アレルゲン免疫療法について

アレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与し、アレルゲンを暴露することで出現する症状を抑えようとする治療法です。

スギ花粉症の治療法として、抗アレルギー薬を飲むことがありますが、これは症状を和らげる対症療法です。

抗アレルギー薬を飲んでもあまり症状が和らがず、副作用の眠気だけが出る人もいます。

しかし、アレルゲン免疫療法はスギ花粉症を根本から治す治療法です。

アレルゲン免疫療法は要するにスギ花粉を体内に入れて、体に慣れてもらうようにするようなイメージの治療法となります。

アレルゲン免疫療法の施行法には、注射による皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy,:SCIT)および舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)があります。

今回の記事ではSCITについては省力し、SLITについて解説します。

スギ花粉症の舌下免疫療法について

スギ花粉症のアレルゲンを舌下(舌の下)に投与し、徐々に身体をアレルゲンに慣らしていき症状を改善していくことが期待できる治療法です。

開始時期は花粉が飛散していない6月から12月くらいの期間です。

花粉が飛散している時期に開始してしまうと、薬と飛散している花粉の影響でアレルギー反応が過剰に出現してしまう危険性があります。

ですので、開始する時期は花粉が飛散していない時期となります。

SLITの効果を期待するには年単位で投与する必要があり、おおよその治療期間は3~5年とされています。

3~5年治療することで、治療を終了した後でも効果が持続することが期待できます。

SLITの目的は、症状の改善今まで使用していた薬が減らせる花粉による小児アレルギー性鼻炎患者ではその後の喘息発症頻度の抑制などです。

一般的な導入の流れ
  • スギ花粉症と診断
  • 舌下免疫療法について説明、同意
  • 医療機関内で投与を開始し、開始30分程度経過は経過観察
  • 2日目以降は自宅で投与し、3~5年継続

スギ花粉症のアレルゲン免疫療法薬|シダキュアについて

スギ花粉症のアレルゲン免疫療法薬にはシダキュアスギ花粉舌下錠という薬があります。

シダキュアの使用方法
  • 舌下に投与し1分間保持したあと飲み込む
  • その後、5分間は飲食やうがいは禁止
  • 投与開始1週間は2000JAUという導入するときの用量と使用してもらい、2週目以降は5000JAUという維持量を使用

JAUとはアレルギー患者の皮膚試験に基づき一般社団法人日本アレルギー学会により設定された国内独自のアレルゲン活性単位(Japanese Allergy Unite)の略です。

シダキュアは1日1回1錠を毎日投与します。

時間は特に指定はありませんが、日中が推奨されています。

理由としては、万が一アナフィラキシーショック等の副作用が出現した場合に、日中の方が対応しやすいからです。

あと、激しい運動や入浴、アルコール摂取する前後2時間は避けるようにとされています。

シダキュア使い方のポイント3選

  1. 口の中が乾いている人は要注意
  2. 手が湿った状態で薬は触らない
  3. 一度に絶対2回分は使用しない

口の中が乾いている人は要注意

口の中が乾いていると薬が溶けにくい人がいます。

ほとんどの人が薬を舌下に入れるとすぐに溶けます。

しかし、ごく一部の人は口の中が乾燥していて薬が1分で溶けない人もいます。

そんな人は薬を舌下に入れる前に口の中を湿らすようにしましょう。

手が湿った状態で薬は触らない

シダキュアはとても吸湿性が高いです。

手が湿っていると薬が手にくっついてしまいます。

ですので、きちんと手を乾かしてから薬を触るようにしましょう。

一度に絶対2回分は使用しない

シダキュアは毎日飲まないといけません。

どんな人でも飲み忘れることはあります。

ですが、前日に飲むのを忘れたからといって、絶対に1日に2回分を飲まないでください。

アレルギー反応が過剰に出現する可能性があり、非常に危険です。

忘れた分はとばしてください。

よくある質問

実際、患者さんへ指導しているときによく聞かれることを紹介します。

Q
今までのアレルギーの薬は併用してよいのか?
A

併用したままでよいです。
舌下免疫療法により減量や中止が期待できます。

Q
どれくらいの効果があるのか?
A

一般的にSLITを含むアレルゲン免疫療法では、8割前後の患者さんで有効性が認められます。

Q
子供でも使えるのか?
A

5歳以上は可能ですが、舌下投与できることが条件です。

Q
どんな副作用があるのか?
A

軽度な副作用ですと、口腔内の腫れや痒みが出現することがあります。
重篤な副作用としてアナフィラキシーショックがあります。

Q
花粉症の症状が出ますか?
A

鼻水やくしゃみなどの花粉症の症状が出ることは少ないです。

まとめ

今回はスギ花粉症の舌下免疫療法について導入方法や薬の使用時のポイントなどを解説しました。

  • 口の中が乾いている人は要注意
  • 薬を使用する前はきちんと手を乾かす
  • 絶対に1日で2回分の薬を使用しない

舌下免疫療法について指導の機会がある医療者や舌下免疫療法を検討している患者さんの参考になっていれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考

シダキュア®スギ花粉舌下錠 添付文書

スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版):一般社団法人 日本アレルギー学会

アレルゲン免疫療法の手引き:一般社団法人 日本アレルギー学会

花粉症環境保健マニュアル2022:環境省

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