【薬剤師の視点】患者さんが「もう治療しません」と言った時に伝えたい薬の話

緩和ケア

こんにちは〜病院薬剤師のMoKaです。

病院薬剤師17年目
緩和薬物療法認定薬剤師
リウマチ財団登録薬剤師(更新2回)
日病薬病院薬学認定薬剤師(更新1回)

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患者さん
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これ以上の治療は、もうやめようと思います

患者さんがそう口にするのは、簡単なことではありません。

長い間病気と向き合い、頑張ってきた患者さんを思うからこその重たい決断です。

そんなとき、私たち薬剤師も何かできることはないか――と、いつも考えています。

薬には、「命を救うための薬」だけでなく、「体や心を少しでも楽にする薬」もあります。

今日は治療をやめると決めたその後にこそ、薬ができることについてお話しさせてください。

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「治療をやめる=薬を全部やめる」ではない

「治療をやめる」と聞くと、すべての薬もやめなければいけないような気がするかもしれません。

でも実は、そうではありません。

薬には大きく分けて2つの役割があります。

ひとつは、「病気を治す・進行を止めるための薬」。

もうひとつは、「痛みや苦しさ、不安などを和らげるための薬」です。

たとえばがんの治療を中止しても、「痛みを取る薬」や「呼吸を楽にする薬」はまだまだ必要です。

「症状を和らげるだけでしょう」と言われることがよくあります。

しかしむしろ、そういった薬はこれからの時間を少しでも穏やかに過ごすために大切な存在なのです。

「症状を取る薬」で生活の質を保つ

治すための治療は終わっても、「楽に過ごす」ことを助けてくれる薬はまだたくさんあります。

たとえば、

  • 呼吸が苦しいときには、医療用麻薬などを使って呼吸を楽にすることができます
  • 不安が強かったり眠れなかったりするときには、気持ちを落ち着ける薬が役立ちます
  • 吐き気や便秘など、体のつらさを軽くする薬もあります。

こうした薬は病気そのものを治すものではありませんが、患者さん自身が「自分らしく」過ごすための助けになります。

息苦しくて夜、しっかり寝れないという患者さんがいました。

その患者さんに医療用麻薬を使ってみますかと勧めてみました。

最初は抵抗があったようですが、使ってみるとすごく楽に寝れるようになったと言われたことがあります。

「もう治らないから」と全部をあきらめなくてもいいんです。

薬には楽に過ごす力があります。

「飲むべき薬」もある一方で、やめてもいい薬も

一方で、「もう続けなくてもいい薬」もあります

たとえば、

  • 血圧を下げる薬
  • コレステロールを下げる薬
  • 骨を強くする薬 など

これらは基本的に、長く飲み続けて将来のリスクを下げるための薬です。

でも、これからの時間を「穏やかに」「できるだけ負担少なく」過ごしたいと思うなら、無理に続ける必要はありません。

また、飲むのがつらかったり、飲み込むのが難しくなってきたときにも薬を見直すタイミングです。

薬を飲み込むのが難しい状況で、薬を飲まないとと考えるだけでもつらいですよね。

もし、薬を飲むことが難しくなってきたときに、補助するためのゼリーもあります。

薬剤師や医師と一緒に、やめる薬・続ける薬を整理することで体への負担もぐっと軽くなります。

家族の「治療をやめます」という決断に寄り添う

「もう治療はやめます」と言ったとき、患者さんの心にはいろんな気持ちが渦巻いています。

「このまま続けても、つらいだけなのではないか」「少しでも苦しまないようにしたい」

そんな思いの中で出された言葉だと思います。

家族や周囲の人には迷惑を掛けたくないからと、誰にも相談することができない患者さんもいます。

薬剤師としてできるのはその気持ちに寄り添いながら、「どうすれば、残された時間をその人らしく過ごせるか」を一緒に考えることです。

薬の使い方を見直すことが、その第一歩になることもあります。

まとめ:治療の終わりに、薬剤師ができること

治療を終える決断は、とても大きなものです。

でも、「治療をやめる=すべてを終わりにする」わけではありません。

薬には「命を延ばす」以外にも「痛みや苦しみを和らげる」という大切な役割があります。

その人がその人らしく、少しでも穏やかに過ごせるように。

薬剤師としてそしてひとりの人間として、そんな時間をそっと支える存在でありたいと思っています。

本記事を最後まで読んでくださりありがとうございました。

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