【緩和ケア】便秘を制する者は緩和ケアを制する

緩和ケア

こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。

今回は緩和医療における便秘について解説します。

終末期になると活動量が減るため便秘の頻度は高くなります。

また、オピオイド鎮痛薬などの便秘を起こしやすい薬を服用していると便秘の頻度はさらに高くなります。

今回の記事のタイトル通り、緩和ケアにおいて便秘に対する関わりはとても重要だと私は思っています。

今回は便秘の定義や原因、生活に与える影響、便秘治療薬についてこれだけは知っていればとりあえずOKと思われる基本的なことを解説します。

緩和医療について勉強を始めた薬剤師や看護師の方々はぜひこの記事を読んでください。

薬物療法について、今回は浸透圧性下剤大腸刺激性下剤についてのみ解説し、その他の下剤については別の記事で解説します。

緩和ケアにおける便秘の理解

緩和ケアとは?

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

https://www.jspm.ne.jp/information/WHO/index.html(2024年3月21日閲覧)

がんなどの疾患に罹患するとさまざまな問題が出てきますので、その問題を把握ししっかりサポートしていくことが緩和ケアです。

その問題は痛みや吐き気などによる身体的な症状だけでなく、気持ちや仕事・生活などの問題も含まれます。

また患者さんだけでなく、その家族も緩和ケアの対象になっています。

便秘の定義

便秘の定義は学会やガイドラインによって異なりますが、一般的に腸管内容物の通過が遅延・停滞し、排便に困難を伴う状態です。

患者さんによっても便秘という言葉の意味は多種多様であり、1日排便がなければ便秘という方もいますし、1週間排便がなければ便秘だという方もいます。

そのため他人と比べるのは難しいので、自身の排便頻度や便の性状などの変化、排便に対して苦痛や困難が見られるときに便秘という認識でよいのかもしれません。

緩和ケアにおける便秘の原因

緩和ケアにおける便秘は主に、がんによるもの(直接の影響と二次的な影響)、薬剤性、併存疾患の3つに大別されます。

がんの直接の影響
  • 腸管の機械的閉塞や狭窄
  • 中枢神経系や末梢神経系の障害
  • 高カルシウム血症
がんの二次的な影響
  • 経口摂取の低下
  • 食物繊維の不足
  • 脱水
  • 衰弱
  • 活動性の低下
薬剤性
  • オピオイド
  • 抗コリン薬
  • 抗うつ薬
  • 抗精神病薬
併存疾患
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能低下症
  • 低カリウム血症
  • 肛門狭窄

便秘の影響

便秘が患者のQOLに与える影響

便秘は排便困難や肛門痛、残便感、腹痛、腹部膨満感など多くの症状が出現します。

また、随伴する症状として悪心・嘔吐や食欲不振などもみられます。

便秘によるさまざまな症状は患者さんの生活の質(quality of life:QOL)に大きな影響を与えるでしょう。

オピオイドによる便秘

オピオイドによる便秘はオピオイド誘発性便秘症(opioid induced constipation:OIC)といわれます。

OICはオピオイド治療開始後に排便頻度の減少、いきみを伴うようになる/より強いいきみを伴うようになる、残便感、便習慣に苦痛を感じるなどの症状です。

便秘の治療法 -薬物療法-

薬物療法の概要

薬物療法の目的は排便回数を増やすことだけではなく、個々の患者さんにとって心地よい排便が得られることです。

下剤の投与を開始する前に腸閉塞を除外したうえで直腸内の宿便を確認しましょう。

硬い便が直腸内に存在している場合は経肛門的処置を行うと、下剤による治療の効果が高まります。

浸透圧性下剤の使用

浸透圧性下剤はその名の通り浸透圧効果を利用して、腸管内に水分を引き寄せて便を柔らかくし便の容積が増大し排便を促す薬です。

糖類下剤(ラクツロース)

ラクツロースは小腸で吸収・分解もされず、管腔内で水分を保持する浸透圧作用で効果を発揮します。

腸管内のpHの低下による腸蠕動の亢進と、便の容量増加により排便を促します。

結腸で分解・吸収されるので、浸透圧効果は結腸では発揮されません。

下剤としての効果発現には1~2日かかる場合もあります。

塩類下剤(酸化マグネシウム)

酸化マグネシウムは胃内で塩酸と反応して塩化マグネシウムとなった後、腸内で重炭酸マグネシウムと炭酸マグネシウムとなり腸管内の浸透圧を高めて排便を促します。

ラクツロースと異なり、腸管全体で浸透圧効果を発揮します。

効果発現は1~6時間くらいなのですが、用量に依存します。

腎機能障害のある患者では高マグネシウム血症を起こすことがあるので注意が必要です。

また腎機能が正常であっても、高齢者や長期間服用している患者も高マグネシウム血症を起こす可能性があるため、初期症状(嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠など)に注意し、定期的な血清マグネシウム濃度の測定が必要となります。

ポリエチレングリコール

ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)は浸透圧効果により、保持された水分が腸に届き大腸内の水分量が増加します。

便中の水分量が増加することで、便が柔らかくなり便の容積が増え、大腸の蠕動運動が活発になり排便が促されます。

日本では大腸内視鏡検査の前処置薬として使用されていましたが、2018年11月から慢性便秘症に対して使用できるようになりました。

大腸刺激性下剤の使用

アントラキノン誘導体(センナ、センノシド)

アントラキノン誘導体は胃や小腸からは吸収されず、大腸内の腸内細菌により代謝されセンニジンを経てレインアスロンとなり、大腸の筋層間神経叢に作用して腸管の蠕動運動を促します。

効果発現は8~12時間くらいです。

アルカリ尿で黄褐色~赤色となることがあります。

注意点として弛緩性便秘を起こす可能性があるため、漫然と使用することは避けた方がいいです。

ジフェノール誘導体(ピコスルファートナトリウム)

ピコスルファートも胃や小腸からは吸収されず、大腸細菌叢由来のアリルスルファターぜにより活性型のジフェノール体に加水分解され腸管粘膜に作用して蠕動運動を促進させ、水分吸収を阻害し便を柔らかくし排便を促します。

効果発現は7~12時間くらいで、習慣性は少ないとされています。

まとめ

今回の記事では、緩和医療における便秘と便秘治療薬(浸透圧性下剤と大腸刺激性下剤)について解説しました。

便秘は患者さんの生活に大きな影響を与えることや便秘治療薬にはそれぞれ特徴があることが分かってもらえたかと思います。

便秘治療薬については今回の記事では浸透圧性下剤と大腸刺激性下剤についてしか解説できなかったので、別記事で上皮機能変容薬や末梢性オピオイド受容体拮抗薬について解説する予定です。

楽しみにしていてください。

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