【薬剤師が解説】便秘症に用いる代表的な漢方薬4選|作用機序と適応の整理

緩和ケア

便秘治療に使われる代表的な漢方薬についてまとめてみました。

病院薬剤師17年目
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「この便秘、どの漢方なら効く?」

そんな疑問に直面したことはありませんか?

便秘は患者のQOLを大きく左右し、薬剤調整のたびに悩まされるテーマです。

西洋薬だけではコントロールが難しいケースや、刺激性下剤に頼りたくない場面でこそ、漢方薬の出番です。
本記事では、『大建中湯』・『麻子仁丸』・『大黄甘草湯』・『潤腸湯』の4つの漢方薬を取り上げ、それぞれの作用・適応・使い分けを現場目線でわかりやすく解説します。

チーム医療における判断の参考に、ぜひご活用ください。

  • 大建中湯は、消化管運動を活性化し、腸管血流量を増やすことで便秘を改善

麻子仁丸

  • 麻子仁丸は、刺激性と浸透圧性の2つの作用で、便秘を改善
  • 偽アルドステロン症のリスクが比較的低い

麻子仁丸の構成生薬はダイオウシャクヤクコウボクキジツキョウニンマシニンとなっています。

麻子仁丸にはほとんどの漢方に含まれているカンゾウが含まれていません。

そのため多くの漢方薬に比べて、偽アルドステロン症が出現する可能性が少ないといえます。

ダイオウ、コウボク、キジツが刺激性、マシニン、キョウニンが浸透圧性に作用します。

刺激性作用だけでは、腸管が不自然に動き下痢に傾いてしまう、浸透圧性作用だけでは、べっとりした便になり上手く流れていかないため、麻子仁丸には両方の作用があるので便秘に適した漢方薬です。

麻子仁丸はCFTR(cystic fibrosis transmembrance conductance regulator)クロライドチャネルの活性化を介した、腸液分泌促進作用が関係しているそうです。

腸管の水分が欠乏し、コロコロした便が出ている人に使うと良いです。

一見見て潤いが足りていなさそうな人は腸管の水分も不足している可能性があるので、そんな人が便秘で困っていたら麻子仁丸が良い選択となるかもしれません。

大黄甘草湯

  • 大黄甘草湯は、ダイオウの成分であるレインアンスロンで腸管運動を促進し、便秘を改善
  • 長期服用での効果減弱に注意

大黄甘草湯の構成生薬はダイオウカンゾウとなっています。

とてもシンプルな構成の漢方薬です。

ダイオウの主成分はセンノシドAを中心としたセンノシド類です。

センノシドは吸収されないまま大腸に到達しビフィズス菌などの腸内細菌により代謝されレインアンスロンとなり、瀉下活性を示します。

レインアンスロンは腸管の緊張を低下させ腸管蠕動を促進し、さらに腸管からの水分の吸収を抑制する効果もあるため便秘に効果がある漢方薬です。

注意点としては、長期間続けて使用すると効果が減弱する可能性があります。

潤腸湯

  • 潤腸湯は、大黄甘草湯と麻子仁丸の両方の薬理効果を含み、便秘を改善

潤腸湯の構成生薬はダイオウカンゾウコウボクキジツキョウニンマシニンジオウオウゴントウキトウニンとなっています。

名前から「腸」を「潤」すとなっているため、いかにも便秘に効果がありそうな漢方薬です。

潤腸湯は大黄甘草湯含有生薬とシャクヤク以外の麻子仁丸含有生薬から構成されています。

そのため、大黄甘草湯と麻子仁丸の両漢方薬の薬理作用を含んだ漢方薬といえます。

まとめ

今回の記事では、便秘治療で使われる漢方薬4選を解説しました。

まとめ

大建中湯: 消化管運動を活発化し、腸管血流量を増やすことで便秘を改善

麻子仁丸: 刺激性と浸透圧性の2つの作用で、便秘を改善

偽アルドステロン症のリスクが比較的低い

大黄甘草湯: ダイオウの成分であるレインアンスロンで腸管蠕動を促進し、便秘を改善

長期服用での効果減弱に注意が必要

潤腸湯: 大黄甘草湯と麻子仁丸の両方の薬理効果を含み、便秘を改善

大建中湯、麻子仁丸、大黄甘草湯、潤腸湯の4種類の漢方薬についてご理解いただけたかと思います。

便秘で悩んでいる患者さんは多いので、少しでも今回の記事が患者さんへの説明にお役立てできれば幸いです。

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