便秘治療に使われる代表的な漢方薬についてまとめてみました。
こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。
今回は便秘に効く漢方薬について解説します。
解説する漢方は大建中湯、麻子仁丸、大黄甘草湯、潤腸湯の4種類です。
この記事を読めば、4種類の漢方薬の便秘に対する効果が理解できます。
大建中湯
大建中湯は大腸通過遅延型便秘に対して選択候補となる漢方です。
大建中湯の構成生薬はカンキョウ、サンショウ、ニンジン、コウイとなっています。
カンキョウとサンショウが腹部を温め、ニンジンが胃腸の消化・吸収を促します。
便秘に対する作用機序は消化管運動の活性化作用と腸管血流量増加作用です。
5-HT3、5-HT4受容体によるアセチルコリン分泌を増加、モチリンというペプチドホルモンの分泌増加、カプサイシン受容体のTRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)への作用により、消化管の運動が活発化されます。
また、TRPV1がCGRP(calcitonin gene-related peptide)というカルシトニン遺伝子関連ペプチドの放出を増やしたりAM(adrenomedullin)産生を増やしたりすることで腸管の血流量が増加します。
サンショウに含まれるヒドロキシ-β-サンショオールがTRPV1、5-HT3、5-HT4に、サンショウに含まれるヒドロキシ-α-サンショオールとカンキョウに含まれる[6]-ショーガオールがCGRPに作用します。
大建中湯は便秘以外でも消化管術後の麻痺性イレウスの予防や治療としても使用されます。
大建中湯は、消化管運動を活性化し、腸管血流量を増やすことで便秘を改善。
麻子仁丸
麻子仁丸の構成生薬はダイオウ、シャクヤク、コウボク、キジツ、キョウニン、マシニンとなっています。
麻子仁丸にはほとんどの漢方に含まれているカンゾウが含まれていません。
そのため多くの漢方薬に比べて、偽アルドステロン症が出現する可能性が少ないといえます。
ダイオウ、コウボク、キジツが刺激性、マシニン、キョウニンが浸透圧性に作用します。
刺激性作用だけでは、腸管が不自然に動き下痢に傾いてしまう、浸透圧性作用だけでは、べっとりした便になり上手く流れていかないため、麻子仁丸には両方の作用があるので便秘に適した漢方薬です。
麻子仁丸はCFTR(cystic fibrosis transmembrance conductance regulator)クロライドチャネルの活性化を介した、腸液分泌促進作用が関係しているそうです。
腸管の水分が欠乏し、コロコロした便が出ている人に使うと良いです。
一見見て潤いが足りていなさそうな人は腸管の水分も不足している可能性があるので、そんな人が便秘で困っていたら麻子仁丸が良い選択となるかもしれません。
麻子仁丸は、刺激性と浸透圧性の2つの作用で、便秘を改善。
偽アルドステロン症のリスクが比較的低い。
大黄甘草湯
大黄甘草湯の構成生薬はダイオウとカンゾウとなっています。
とてもシンプルな構成の漢方薬です。
ダイオウの主成分はセンノシドAを中心としたセンノシド類です。
センノシドは吸収されないまま大腸に到達しビフィズス菌などの腸内細菌により代謝されレインアンスロンとなり、瀉下活性を示します。
レインアンスロンは腸管の緊張を低下させ腸管蠕動を促進し、さらに腸管からの水分の吸収を抑制する効果もあるため便秘に効果がある漢方薬です。
注意点としては、長期間続けて使用すると効果が減弱する可能性があります。
大黄甘草湯は、ダイオウの成分であるレインアンスロンで腸管運動を促進し、便秘を改善。
長期服用での効果減弱に注意。
潤腸湯
潤腸湯の構成生薬はダイオウ、カンゾウ、コウボク、キジツ、キョウニン、マシニン、ジオウ、オウゴン、トウキ、トウニンとなっています。
名前から「腸」を「潤」すとなっているため、いかにも便秘に効果がありそうな漢方薬です。
潤腸湯は大黄甘草湯含有生薬とシャクヤク以外の麻子仁丸含有生薬から構成されています。
そのため、大黄甘草湯と麻子仁丸の両漢方薬の薬理作用を含んだ漢方薬といえます。
潤腸湯は、大黄甘草湯と麻子仁丸の両方の薬理効果を含み、便秘を改善。
まとめ
今回の記事では、便秘治療で使われる漢方薬4選を解説しました。
大建中湯、麻子仁丸、大黄甘草湯、潤腸湯の4種類の漢方薬についてご理解いただけたかと思います。
便秘で悩んでいる患者さんは多いので、少しでも今回の記事が患者さんへの説明にお役立てできれば幸いです。
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