心不全と緩和ケア

心不全

こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。

今回は心不全と緩和ケアについて解説します。

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心不全という疾患から緩和ケアとは、なぜ心不全の緩和ケアが重要なのかを改めて勉強し、コンパクトに分かりやすくまとめましたのでぜひご覧ください。

心不全についての基礎知識

心不全の定義

なんらかの心機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群

心不全は循環器疾患の中で、とても重要な疾患です。

この疾患は心臓が血液を体中に送るのが難しくなる状態を指します。

例えば、水をくみ上げるポンプがうまく動かなくなったとき、水はうまく流れませんよね。
心不全も同じで、心臓がポンプのような役割をしているので、うまく動かないと血液が体中に行き渡らなくなります。
ですので、心不全は循環器疾患の中でも特に注意が必要な病気です。そして、これからもっと多くの人がこの疾患になるかもしれないと考えられています。

緩和ケアとは?

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

日本緩和医療学会「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳

治療とは一般的に病気を治す(完治など)ことを意味します。

ですが緩和ケアは患者とその家族の生活の質(QOL)を改善することを目的とし、苦痛を把握し、その苦痛を和らげるためのケアです。

また緩和ケアはがん患者だけに行われるケアと思われがちですが、定義にもあるように、生命を脅かす病となっていますので、がん以外の病にも行われるべきケアが正しいです。

心不全における緩和ケアの重要性とは?

近年、高齢化社会の進行や食生活の変化などが影響し、循環器疾患の患者数が増加しています。特に心不全はその中でも多くを占め、将来的には「心不全パンデミック」と呼ばれる状況が予測されています。

医療の進歩により、心不全の治療においては生命予後の改善が見られていますが、QOLの改善については未だに課題が残されています。特に心不全の終末期において、どのように対応すべきかは未解決の問題です。

心不全は治療しても完治することができず、治療が難しいケースもあります。このような背景から、WHOの報告によれば心血管疾患が終末期における緩和ケアが必要な疾患の主要なものとして挙げられ、治療目標にも明確に緩和ケアが位置付けられています(StageCでは緩和ケア、StageDでは終末期ケアとして)。

特に2018年の診療報酬改定により、「緩和ケア診療加算」の対象に末期心不全患者が含まれたことで、心不全に対する緩和ケアの重要性と認知度が高まっています。これにより、心不全患者のQOL向上や症状管理の向上が期待されています。

結果として、将来的にはより効果的な緩和ケアの提供が必要不可欠となり、医療体制全体での対応が求められています。

心不全ステージ分類

StageA:器質的心疾患のないリスクステージ
StageB:器質的心疾患のあるリスクステージ
StageC:心不全ステージ
StageD:治療抵抗性心不全ステージ

がん緩和ケアと心不全緩和ケアの違い

不全はがんとは異なる病みの軌跡をたどり、急性増悪による入退院を繰り返しながら、最期は比較的急速に悪化するため、終末期の判断が難しいことがあります。がんでは状態が比較的直線的に悪くなるのに対して、個々の心不全患者の予後予測は非常に難しいです。

またがんでは手術や抗がん薬治療などの積極的治療は終末期には中止されますが、心不全の治療の多くはうっ血と組織低灌流を改善するという症状緩和の方向にも働くため、最後までガイドライン推奨の薬物療法・非薬物療法の検討を平行して行うこともあります。ただし、心不全の治療自体が患者の苦痛になっているケースでは、中止や差し控えが考慮されます。

さらに緩和ケアを必要とする症状もがんと心不全では異なります。がんでは痛みが症状の上位ですが、心不全では呼吸困難が多かったという報告があります。

心不全の緩和ケアの問題点

心不全に対する緩和ケアはStageCの段階から心不全治療と並行して提供されるべきです。StageDの段階になってからでは遅いのです。

心不全に対する積極的治療と緩和ケアを両立させていくためには、患者がStageCからStageDへと進行していく心不全の病の軌跡を十分に理解することが重要です。しかし、心不全の急性増悪時には治療によって症状が迅速に改善することもあり、心不全患者の予後に対する認識は実情とは異なることが知られています。

そのため、心不全発症の早い段階から患者やその家族に心不全の病の軌跡を理解してもらう機会を提供することが、積極的治療と緩和ケアの両立にとって基本です。患者やその家族が心不全の臨床経過の中で状態が変化することに備えるためには、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を通じた意思決定の過程を共有することが重要です。

心不全の経過中、患者は呼吸困難、全身倦怠感、疼痛、抑うつ・不安、せん妄などさまざまな身体的および精神的症状を示すことがあります。心不全の病態に対する利尿薬、血管拡張薬、強心薬などの治療により症状は改善することができますが、症状の緩和が不十分な場合には、治癒的治療を継続しつつ、追加の薬物や非薬物的介入を検討する必要があります。

まとめ

今回の記事では心不全の緩和ケアについて解説しました。

心不全の緩和ケアがとても重要であることが分かっていただけたかと思います。

心不全の緩和ケアが推奨されていても、とても忙しい日常臨床の中で、どのようにACPをすすめていけばよいか分からないこともあり今後の課題ではないかと思います。

心不全患者が穏やかに最期を迎えられるように支援していくことはとても重要ですので、医療者は患者やその家族と話をする機会を多く作るようにしてほしいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<参考>
日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン.急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf[2024年7月10日閲覧]
日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン.2021年改訂版 循環器疾患における緩和ケアについての提言 https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Anzai.pdf[2024年7月10日閲覧]

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