あのドラマに出てきた、悪性高熱症とその治療薬ダントロレンについて解説します。
こんにちは!病気薬剤師のMoKaです。
あのドラマとは『ブラックペアン2』のことです。
第9話で患者さんが手術中に悪性高熱となり、ダントロレンがないとバタバタするシーンがありました。
ドラマを見ていた方の中には「悪性高熱って何?」「ダントロレンがないとまずいの?」と思ったのではないでしょうか?
悪性高熱症は起こる確率は非常に低くまれですが、起こるとかなり危険です。
そして、治療にはダントロレンが必要です。
悪性高熱症について、どのような危険性があるのか、治療薬のダントリウムについてなど病院薬剤師が解説します。
悪性高熱症とは?悪性高熱症の病態整理
悪性高熱症(Malignant hyperthermia:MH)は全身麻酔の手術中に高熱や頻脈などを起こします。
頻度は非常に低くまれですが、進行が早いため迅速に対応しないと危険な状態となります。
MHは揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬の暴露をきっかけとして、全身麻酔中や全身麻酔後に発症します。
MHでは骨格筋細胞内のカルシウムの貯蔵庫である筋小胞体から細胞内へのカルシウム放出機構が亢進しています。
そのため骨格筋細胞内では筋収縮が異常に持続し続け、ATPの消費も異常に亢進し、さらに筋小胞体へのカルシウム取り込みに伴うATP消費も増大します。
これらのATPの異常消費により、大量の熱が産生されます。
また、ミトコンドリア内のカルシウム依存性のホスホリパーゼA2(PLA2)活性も異常亢進し、熱産生が加速されます。
このような理由で酸素消費量は増大し、二酸化炭素の産生も異常に亢進します。
どうして危険なのか?悪性高熱症の頻度と臨床症状
MHは全身麻酔患者さんの10万人に1~2人の頻度で発症するとされています。
かなりまれであることが分かりますね。
しかも、死亡率が高く1960年代では70~80%とかなりの高率。
2000年以降は15%程度まで下がってきましたが、とても危険だと分かってもらえたかなと思います。
症状には急激な体温上昇、原因不明の頻脈、筋強直、尿の色が赤褐色・コーラ色、多臓器不全などがあり、重篤な症状が多いです。
もし、救命されたとしても筋肉障害(歩行障害など)や意識障害などの後遺症が残る場合もあります。
治療薬のダントロレンとは?薬理作用
ダントロレンはMHの原因部位に直接作用する薬です。
どこに作用するかというと、骨格筋細胞内の筋小胞体からのカルシウム放出チャネル(1型リアノジン受容体:RYR1)に作用します。
RYR1に作用することでカルシウムの放出が抑制されるため、MHに効果があります。
ダントロレンはどのように使うのか?投与方法
ダントロレンは患者さんの体重に合わせて投与量を決めます。
初回投与量は1.0mg/kgのダントロレンで、注射用水(1バイアル20mgに対して60mL)で溶解・希釈します。
溶解液が注射用水というのがポイントです。
多くのは注射剤は生理食塩水(生食)で溶解することが多いですが、ダントロレンは生食で溶解すると塩析やpH変動などにより混濁・沈殿などが生じる危険性があります。
ですので、溶解液には必ず注射用水を用います。
急いでダントロレンを投与しないといけないのに、間違った方法で溶解してしまい投与が遅れることがないようにしましょう。
ダントロレンの投与量は体重60kgの人でダントロレン3バイアルを使用します。
追加で投与する可能性もありますので、ある程度のはストックとして手術室に置いておく必要があります。
症状により適宜増量しますが、最大投与量は7.0mg/kgまでです。
まとめ
今回のあの人気ドラマ「ブラックぺアン2」にも出てきた、悪性高熱症とその治療薬ダントロレンについて解説しました。
いつ起こるか、誰に起こるか分かりませんので、定期的に勉強をしておき、万が一起こった場合には適切に迅速に対応できるようにしておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考:悪性高熱症患者の管理に関するガイドライン2016
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