医療用麻薬廃棄の手続きを知っておくことは重要です。
こんにちは、病院薬剤師のMoKaです。
今回は医療用麻薬の廃棄について解説します。
医療用麻薬を廃棄する際、どのような手続きを取ればよいでしょうか?
実は、すべての医療用麻薬には同じ手続きが適用されるわけではありません。
ざっくり言うと、調剤される前と後で手続きが異なります。
この記事では、それぞれのケースにおける麻薬の廃棄手順について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、麻薬の廃棄に関する知識を身につけることができます。
麻薬の廃棄に関心をお持ちの方は、是非一読ください。
医療用麻薬とは
医療用麻薬とは、優れた鎮痛効果を有し、医療の現場、特にがん性疼痛治療には欠かせない薬です。
一方で適正な使用を怠れば、乱用に直結する危険性が高い薬でもあります。
医療用麻薬でも医師から指示された用法用量以外で使用すると、依存や耐性に陥るかもしれません。
医療用麻薬の廃棄
医療用麻薬を一般のゴミと同じように廃棄してしまうと、誰かが拾い不適切に使用されてしまう危険性があります。
そのため、麻薬の廃棄については法律できちんと決められています。
麻薬を廃棄しようとする者は、麻薬の品名及び数量並びに廃棄の方法について都道府県知事に届け出て、当該職員の立会いの下に行わなければならない。ただし、麻薬小売業者又は麻薬診療施設の開設者が、厚生労働省令で定めるところにより、麻薬処方せんにより調剤された麻薬を廃棄する場合は、この限りでない。
麻薬及び向精神薬取締法 第二十九条
廃棄する手続きには、「麻薬廃棄届」と「調剤済麻薬廃棄届」があり、それぞれのケースで手続きが異なることに注意が必要です。
なお、注射薬と坐薬は届出の必要はありません。
麻薬廃棄届
麻薬廃棄届が対象となるのは、調剤される前の麻薬です。
つまり患者さんに渡る前の麻薬ということになり、管理の責任は医療者側にあります。
麻薬廃棄届の対象となる麻薬は以下のとおりです。
- 古くなった麻薬(期限切れなど)
- 変質、破損などにより使用できなくなった麻薬
- 使用の見込みがなく不要となった麻薬
- 誤調剤により使用できなくなった麻薬
このケースでは、あらかじめ都道府県知事に「麻薬廃棄届」により届けなければいけません。
また、保健所職員又は麻薬取締員の立ち会いの元、廃棄する必要があります。
調剤済麻薬廃棄届
調剤済麻薬廃棄届が対象となるのは、調剤された後の麻薬です。
つまり麻薬処方せんにより調剤された麻薬ということになり、管理の責任は患者側にあります。
調剤済麻薬廃棄届の対象となる麻薬は以下のとおりです。
- 入院患者の飲み残した麻薬や死亡などで中止になった麻薬
- 入院時に持参したが、使用しなかった麻薬
- 外来患者が不要となり、患者やその家族から返却された麻薬
- 外来患者が死亡したため、患者の遺族などから返却された麻薬
このケースでは廃棄した後、30日以内に都道府県知事に届け出ます。
また麻薬管理者が施設の他の職員の立ち会いのもと廃棄します。
患者・家族への説明
医療用麻薬を使用していて用量が変更されたり、患者さんが亡くなったりして、使わなくなった麻薬が発生することもあります。
そのため、不要となった医療用麻薬をどのように処理すればよいかを患者さんや家族に説明することも大切です。
基本的に、不要となった医療用麻薬はもらった病院や薬局に返却するように指導しています。
患者さん自身で一般ゴミと同じように廃棄すると、他の人が使用したり、悪用されたりする危険性があります。
まとめ
今回の記事では、医療用麻薬の廃棄について解説しました。
破損などにより使用できなくなった麻薬を廃棄する場合は、あらかじめ「麻薬廃棄届」を届け出る必要があります。
麻薬処方せんにより調剤された麻薬は廃棄した後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を届け出ることになっています。
これらはとても大切なことなので覚えておきましょう。
参考:病院・診療所における麻薬管理マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_01.pdf
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