オピオイド鎮痛薬の副作用は【便秘】【悪心・嘔吐】【眠気】の3つをまず抑えよう!
こんにちは!!薬剤師のMoKaです。
オピオイド鎮痛薬は、がん疼痛の治療に欠かせない薬です。
しかし、オピオイド鎮痛薬には、様々な副作用があります。
副作用のためにオピオイド鎮痛薬を服用するのを拒否する患者さんをしばしばみられますので、オピオイド鎮痛薬の副作用について知っておくことは緩和ケアに関わる医療者としてとても重要です。
この記事では、オピオイド鎮痛薬の主な副作用とその対処法について【超超超】基礎的なことを解説します。
この記事の筆者は病院薬剤師として14年のキャリアがあり、また緩和薬物療法認定薬剤師の資格を取得し日々がん患者さんにかかわっています。
便秘について
便秘とは
便秘とは、腸管内容物の通過が遅延・停滞し、排便に困難を伴う状態です。
がん患者さんの便秘の原因はいろいろあり、薬剤性が原因の1つとなります。
以下に便秘の原因となる主な薬剤を示します。
日本緩和医療学会編,専門家をめざす人のための緩和医療学改訂第2版,南江堂,2019年
オピオイドによる便秘
オピオイドによる便秘は、オピオイド誘発性便秘(Opioid Induced Constipation:OIC)と呼ばれます。
オピオイドは、がん疼痛の治療に用いられる鎮痛薬の一種ですが、腸の動きを抑える作用があります。
そのため、オピオイドを服用すると、排便頻度が低下したり、いきみが強くなったり、残便感や便習慣に苦痛を感じたりすることがあります。
OICは、オピオイド鎮痛薬の種類や用量によって、程度や頻度が異なります。
オピオイドを使用している患者さんのほとんどが便秘を経験するという報告があります。
また、OICはオピオイド鎮痛薬の使用を続ける限り、耐性がつかないため、改善されることはありません。
マネジメント
OICは、患者さんの生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、鎮痛効果の低下や治療の中断の原因にもなります。
そのため、OICの予防や対処は、がん疼痛治療の重要な一部です。
OICの予防や対処には、食事や運動などの生活習慣の改善や、下剤などの薬物療法があります。
下剤には、腸の動きを刺激するタイプ(大腸刺激性下剤)や、便を柔らかくするタイプ(浸透圧性下剤)など、様々な種類があります。
また、OICに対して保険適応のある薬や新規作用機序の便秘治療薬もあります。
これらの薬剤は、患者さんの状態や便の状態に応じて、適切に選択する必要があります。
オピオイド使用中は便秘は必発と考え、十分な予防・対策を!!
悪心・嘔吐について
悪心・嘔吐とは
悪心は消化管の内容物を口から吐き出したいという切迫した不快な感覚、嘔吐は消化管の内容物が口から強制的に排出されることです。
以下にがん患者さんの悪心・嘔吐の原因を示します。
オピオイドによる悪心・嘔吐
オピオイドによる悪心・嘔吐は、オピオイドがCTZ (chemoreceptor trigger zone:化学受容器引き金帯)に発現しているオピオイド受容体を刺激することによりドパミンの遊離を引き起こし VC (vomiting center:嘔吐中枢) が刺激されることによる症状です。
また、前庭器に発現しているオピオイド受容体も刺激することにより、ヒスタミンが遊離し、CTZ や VC を刺激することでも引き起こされます。
オピオイドによる悪心・嘔吐は、持続的な悪心とそれが増悪して起こる嘔吐と、体動時に突然起こる嘔吐があります。
オピオイドによる悪心・嘔吐は、オピオイドの投与初期と増量時に発現することが多く、持続する悪心は数日から1週間で耐性が生じ消失することが多いです。
マネジメント
原則はオピオイド開始するときに制吐剤の予防投与は不要となっています。
ただし、悪心・嘔吐が出現する可能性が高い場合(乗り物酔いをしやすいや抗がん薬治療で吐き気を経験したなど)は、予防投与を行なってもよいとされています。
悪心・嘔吐が出現した場合は、抗ヒスタミン薬かドパミン受容体拮抗薬を投与し、効果がなければ別機序の薬を投与します。
ドパミン受容体拮抗薬を使う時は、常に薬剤性錐体外路症状に注意し、短期間の投与にしましょう。
オピオイドによる悪心・嘔吐は耐性ができる
原則、制吐薬は不要だが、リスクがある時は考慮し、必要最低限の使用にしよう
眠気について
オピオイドによる眠気
オピオイドによる眠気は、投与開始初期や増量時に出現することが多いですが、耐性が生じ、数日で自然に軽減または消失することが多いです。
オピオイド以外の原因(感染症、肝腎機能障害、中枢神経系の病変、高カルシウム血症などの電解質異常)や相互作用の原因になる併用薬物、眠気を生じる他の併用薬 (制吐薬としての抗精神病薬、睡眠薬、鎮痛補助薬)についても考えるようにしましょう。
モルヒネを使用している場合は、腎機能低下によるモルヒネ-6-グルクロニド (M6G) の蓄積が原因となることがあります。
マネジメント
オピオイド開始後や増量後1週間以上経過しても強い眠気が続いている場合は、オピオイドの減量を検討しましょう。
また、オピオイドを減量して痛みが増強した場合は、オピオイドスイッチングを検討しましょう。
心地良い眠気はOK
不快な眠気であれば、オピオイドの減量やオピオイドスイッチングで対応しよう
まとめ
今回の記事ではオピオイド鎮痛薬の3つの副作用をまとめました。
オピオイド鎮痛薬の副作用は、患者さんのQOLを低下させるだけでなく、治療の中断やアドヒアランス低下の原因にもなります。
そのため、薬剤師や看護師は、オピオイド鎮痛薬の副作用について正しく理解し、適切な対処法を提供することが重要です。
また、患者さんや家族にも、オピオイド鎮痛薬の副作用について教育し、副作用の早期発見や予防に協力してもらうことが必要です。
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