【緩和ケア】レスキュー薬を使ってくれないときの一手

緩和ケア

こんにちは!病院薬剤師のMoKaです。

緩和ケアでは疼痛治療に対するスキルはかなり重要な役割を果たします。

その中でもレスキュー薬は痛みを改善するために欠かせない薬です。

しかし、患者さんの中には痛くなっても適切にレスキュー薬を使えてないケースも少なくありません。

そのような患者さんに対して、レスキュー薬を使ってもらうようにするのは難しいです。

そこで今回は緩和薬物療法認定薬剤師のMoKaが、患者さんがレスキュー薬を適切に使ってもらうアプローチ方法について解説します。

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レスキュー薬とは?

レスキュー薬とは、痛みが増強したときに臨時に追加する鎮痛薬のことです。

レスキュー投与、レスキュー・ドーズという場合もあります。

一般的にオピオイドのことを示すことが多く、経口短時間作用型オピオイドやフェンタニル口腔粘膜吸収薬などがあります。

生活の中でレスキュー薬を適切に使えるようになることはとても重要なことです。

たとえ痛みが急に出現したとき(突出痛)に、レスキュー薬を適切に使うことができれば、自分で痛みをコントロールすることができるという安心感につながります。

突出痛

定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み

レスキュー薬を適切に使えるようになれば、疼痛治療が格段にレベルアップします。

レスキュー薬を使わない理由とは?

実際にはレスキュー薬が処方されもらっているのに、使用していない患者さんもおられます。

処方されているレスキュー薬を患者さんが使わない理由にはどんなことがあるのでしょうか?

以下の3つが考えられます。

  • 薬の依存や副作用への懸念
  • 使用方法への不安
  • 痛みのコントロールへの諦め

薬の依存や副作用への懸念

麻薬やモルヒネと聞くと依存症になるのではないかと心配する人が今でもいます。

依存になると、おかしな行動をしたり薬がやめられなくなったりすると誤解されているかもしれません。

またオピオイドを開始するときに効果の説明だけでなく、吐き気や便秘などの副作用についても説明を受けます。

その副作用が出てしまうことが怖くなってしまう方もいるかもしれません。

このようにレスキュー薬の依存や副作用が心配でレスキュー薬を使わない患者さんがいるのではないでしょうか。

使用方法への不安

レスキュー薬は痛みが増強したときに飲む薬で、1日のうちに決まったときに飲む薬(定時薬)とは使用方法が異なります。

定時薬は飲むタイミングが決まっているのでそれに従うだけでよいですが、レスキュー薬は自分のタイミングで使う必要があります。それが患者さんにとっては難しいと感じるのかもしれません。

また、痛みが増強したときというのは、発熱のように体温が何℃と決まった数値がありません。レスキュー薬を使う決まった数値がないのも、患者さんがレスキュー薬の使用方法に不安を感じる理由なのかもしれません。

痛みのコントロールへの諦め

患者さんの中には痛みに対する治療開始が遅くなり、痛みで苦しむ期間が長くなってしまった方もいるかもしれません。

そのせいで痛み止めを飲んでも痛みが和らがないと思い込み、レスキュー薬を使うのを諦めてしまったのかもしれません。

レスキュー薬を寝る前に飲んでもらうメリット

患者さんに安心してレスキュー薬を使ってもらうためには、まずレスキュー薬の効果を実感してもらう必要があります。

その方法の一つとして自分が提案するのは、“寝る前にレスキュー薬を飲む”です。

この方法は、なかなかレスキュー薬を飲んでくれない患者さんに対する解決策として有効です。

「えっ、痛い時に飲むはずのレスキュー薬を寝る前に飲むのですか?」と疑問に思われるかもしれませんが、いくつか理由があります。

効果の確認

寝る前にレスキュー薬を飲むことで、その効果を明確に確認できます。

もし、飲んでスッキリ寝られたのであれば、レスキュー薬の効果があったと考えられます。

効果の確認ができたのであれば、次に痛みが強くなったときにレスキュー薬を使おうという行動に移ります。

ですので効果を確認するために、寝る前にレスキュー薬を飲んでみることは有益なはずです。

副作用の軽減

レスキュー薬(オピオイド)は副作用として眠たくなることがありますが、寝る前に飲むことで、この眠気が気にならないはずです。

寝る前にレスキュー薬を飲むため、たとえ副作用として眠気が強くなっても副作用かどうなのかも分かりません。

もし副作用として眠気が出たとしても、夜にぐっすり寝られたのであれば、患者さんにとっては良いことだと思います。

しかもオピオイドの副作用の眠気は数日で耐性化しますので、何度かレスキュー薬を使用すると身体が慣れてくるはずです。

眠気がずっと続くようであれば、薬の量が多い可能性がありますので、調整が必要です。

レスキュー薬を寝る前に飲むことのデメリット

ここまで患者さんに適切にレスキュー薬を飲んでもらうために、レスキュー薬を寝る前に飲んでもらうメリットをご紹介しました。

一方でデメリットについても解説します。

レスキュー薬を寝る前に飲んでから、痛みが強くなったときはレスキュー薬を飲むようになったけど、もし毎日、寝る前にレスキュー薬を飲んでいるようにであれば注意が必要です。

痛くなったときに飲むはずのレスキュー薬を毎日同じ時間に飲むことには何か理由があるはずです。

もし、その理由が安心するであれば要注意です。

レスキュー薬は痛みが強くなったときに飲む薬であって、安心するために飲む薬ではありません。

安心するために飲むのであれば、依存症(精神依存)と同じです。

レスキュー薬を適切に使ってもらうために寝る前に飲んでみることは手段ですが、適切に使えるようになったのであれば同じ時間に飲むのは中止しましょう。

まとめ

今回はレスキュー薬を使ってくれない患者さんに、寝る前に飲んでもらうという方法について解説しました。

レスキュー薬は疼痛治療にとってとても有効な武器ですが、武器も使わなければ宝の持ち腐れです。

レスキュー薬を適切に使ってもらい、患者さんの痛みが改善し快適な生活が送れるように願います。

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