こんにちは~病院薬剤師のMoKaです。
新人薬剤師のあなた、もしかして医師に処方提案し受け入れてもらえた〜と嬉しくなっただけで満足していませんか?
提案後にもすることもあるのはもちろん知っていますよね?
今回の記事では、処方提案後にしないといけないことについて説明していきます。
私は病院薬剤師として20年近く仕事をしていて、数え切れないくらい提案してきました。
さらに緩和やリウマチの資格をもっていて、資格取得のために症例報告も提出しています。
薬剤師が処方に関与する機会は年々増えています。
特に病院薬剤師にとって「処方提案」は、ただの確認作業を超えた、より能動的な役割です。
今回は、処方提案とは何か、なぜ行うのか、そして実際に提案した後に気をつけるべきことをまとめてみました。
以下の本は処方提案をしたいけど、薬の使い分けがわからない人にオススメです。
処方提案とは?
処方提案とは、医師の処方内容に対して薬剤師が積極的に意見を述べ、より良い薬物治療を目指して提案する行為です。
疑義照会とは異なり、必ずしも明確な間違いや問題点がある場合だけでなく、「より望ましい薬物治療」を目的とした提案も含まれます。
医療は日々進歩しており、かつて標準とされていた薬物治療が、現在では必ずしも最善の選択とは限りません。
最新の薬物治療を学び、それを提案することは薬剤師の役割でもあります。
なぜ処方提案するのか?
薬剤師が処方提案を行う背景には、単なる薬の確認作業という枠を超えた、医療チームの一員としての責任と役割があります。
薬剤師は患者さん一人ひとりにとって最も安全で効果的な薬物療法が実現されるよう、専門的な知識をもとに処方に積極的に関与していくことが求められています。
薬剤師が処方提案する理由を4つ紹介します。
- 処方に疑義が必要
- より良い薬物療法のため
- タスクシフト/シェア
- 薬がない
処方に疑義が必要
処方せんを確認するとき、用量や用法の誤り、薬剤同士の相互作用、同じ成分を含む薬の重複投与といった、明らかな問題点が見つかることがあります。
これらは患者さんの安全に直接関わる重大なリスクとなるため、薬剤師は必ず医師に確認を取り、必要に応じて処方内容の修正を提案する必要があります(薬剤師法第二十四条)。
この一連の対応は、薬剤師としての基本的かつ重要な責務です。
より良い薬物療法のため
処方提案は単にエラーを正すだけでなく、患者の病態や既往歴、現在の治療状況を踏まえたうえで、より効果的かつ安全な薬剤の選択肢を提示することも含まれます。
これは近年注目されている「提案型薬剤師」の実践の一環であり、最新のエビデンスや診療ガイドラインに基づいた、積極的な薬学的介入が求められる場面です。
薬の変更や追加、投与経路の工夫など、患者にとってより良い治療環境を整えることが目的ですね。
タスクシフト/シェア
近年、医師の業務負担が増大していることが社会的な課題となっています。
その中で薬剤師が処方提案を行うことは、医師の業務の一部を分担・共有する「タスクシフト」「タスクシェア」の取り組みにもつながります。
薬剤師が薬の選択や投与設計に積極的に関与することで、医師の負担が軽減され、チーム全体としての医療の質や効率が向上する効果も期待できます。
薬がない
在庫の都合や供給不安定などの理由により、処方された薬剤が院内で使用できないケースもあります。
こうした場合には、薬剤師が代替薬を検討し、医師に対して同等の治療効果が見込める薬剤を提案することがあります。
これもまた重要な処方提案の一つであり、患者の治療が滞りなく継続できるようにするための、実務的で重要な役割です。
処方提案後にすること
処方提案して薬剤師の役割が終わりではありません。
処方が変更された後にも薬剤師が果たすべき役割はたくさんあります。
ここでは病院薬剤師目線での特に大事なことを3つ紹介します。
- 看護師に伝達
- 患者さんに説明
- 効果や副作用のモニタリング
看護師に伝達
薬が追加・中止になった、薬が変更になったなどがあれば看護師への情報共有は欠かせません。
薬の提案は医師に行い、看護師が関与していないこともあります。
持参薬から院内薬に変更した場合、ある薬を中止して別の薬に変更する場合など、現場の混乱を防ぐためにも早急な伝達が必要です。
伝達を怠ると、薬を変更したのに前の薬がそのまま飲まれているというような事故が発生してしまう危険性があります。
提案後の看護師への共有はとても重要です。
患者さんに説明
新しく薬が開始になる、今まで飲んでいた薬が変更になると患者自身が不安を感じることもあります。
新たに処方された薬の効果や注意点を丁寧に説明し、服薬アドヒアランスの向上を図りましょう。
説明がないと薬を理由も分からずに飲んでしまう原因にもなります。
提案後はきちんと患者に説明しましょう。
効果や副作用のモニタリング
処方変更後は、効果が得られているか、副作用が出ていないかを観察し、必要に応じて再度提案を行うこともあります。
自分が薬を提案しておいて、効果も副作用も確認しないなんて無責任過ぎますよね。
提案後も継続的なフォローが大切です。
薬の効果を判定する方法や副作用での注意点など看護師や患者と共有するのもありです。
処方提案後の注意点
処方提案後の注意点についても解説しておきます。
記録に残す
提案内容や医師の返答、最終的な処方決定については、必ず記録に残しましょう。
口頭だけのやり取りではトラブルになりやすく、監査時にも対応できません。
提案内容が一緒に働いている薬剤師にも共有できるため、問い合わせなどにも対応できます。
また、資格取得のための症例報告に役立つ場合もあります。
提案内容や根拠、医師の返答などは記録に残すようにしましょう。
相手が理解できる表現で伝える
提案時の専門用語の羅列や薬剤師目線だけの説明は、かえって混乱を招くことがあります。
医師・看護師・患者それぞれに応じた伝え方を意識しましょう。
薬剤師にとって使い慣れている単語や用語でも他の医療職にはなじみのないものかもしれない。
ましてや患者や家族にとってはさらに分かりづらいはず。
必要であれば、わかりやすいパンフレットなどを活用しましょう。
まとめ
今回は薬剤師の処方提案について病院で働く薬剤師目線で解説しました。
「お作法」なんて少し仰々しいタイトルですが、今回の紹介したことはどれも当たり前の内容です。
当たり前なのですがついつい忘れてしまうようなことがあってはならないので紹介しました。
処方提案は、薬剤師の専門性を活かせる重要な業務のひとつです。
提案のタイミングや内容、伝え方に配慮することで、チーム医療の質を大きく高めることができます。
薬剤師としての視点を活かし、より安全で有効な薬物療法を一緒に築いていきましょう。
薬を勉強していると薬の使い分けがわからない場合がよくあります。
以下の本はそんな人にオススメです。
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