【緩和ケア】便秘治療の新星!ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを徹底解説

緩和ケア

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こんにちは、病院薬剤師のMoKaです。

前回の記事では、緩和医療における便秘について解説しました。

その中で便秘治療薬については一部しか解説できなかったため、今回の記事で新しい機序の便秘治療薬について解説します

MoKa
MoKa

この記事は次のような人におすすめ!

  • 新しい機序の便秘治療薬について知りたい
  • 上皮機能変容薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬について知りたい
  • ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットの違いを知りたい

この記事では、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットについて徹底的に解説します。

もしも「記事を読む時間がないよ」という方は、下記の比較表だけでもご覧ください。

ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットの違いは?

2010年代に新規作用機序の便秘治療薬が登場しました。

ルビプロストンリナクロチドエロビキシバットです。

3つの薬を分類で分けると、ルビプロストンとリナクロチドは上皮機能変容薬エロビキシバットは胆汁酸トランスポーター阻害薬です。

うーん、余計に分からなくなってきましたね。

大丈夫です、1つずつ説明していきます。

ルビプロストンとリナクロチドは上皮機能変容薬

上皮機能変容薬は腸の中の水分量を増やして便秘を治療する薬です。

この薬は腸の中の小さな通路を活発にして、水分をたくさん出すことで便を柔らかくします

例えば、ルビプロストンは腸の中の特定の通路を開いて、腸の中に水分を引き込みます。

これによって便が柔らかくなり腸の中をスムーズに便が流れていきます。

そのため上皮機能変容薬は便秘治療にとても有効な薬です。

エロビキシバットは胆汁酸トランスポーター阻害薬

胆汁酸トランスポーター阻害薬も腸の中の水分を増やして便秘を治療する薬です。

この薬は体が普段再吸収される胆汁酸という成分を腸の中に残すことで、水分を引き込んで便を柔らかくします

エロビキシバットは食事の前に飲むと、胆汁酸が腸の中に残り水分を引き込んで便を柔らかくし便秘を治療します。

そのため、胆汁酸トランスポーター阻害薬は便秘に有効な薬です。

ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットについてそれぞれ解説

ルビプロストン

ルビプロストンはClC-2クロライドチャネルという部位を活性化して腸の中に水分を引き込む薬です。

腸管内に水分分泌を促し、便を柔らかくして腸管内の便輸送を高め排便を促進します。

アミティーザ®️カプセル総合製品情報概要から抜粋

投与開始初期は悪心で内服継続ができない人が多いため、空腹時の内服は避け必ず食後に内服することを守りましょう。

連用しても効果が減弱しにくく、電解質異常は起こりにくいです。

開始後2〜3週間で安定した効果が発現するため、時間的余裕のある場合に考慮しましょう。

副作用は悪心(30%)、悪心(23%)などです。

リナクロチド

リナクロチドは結腸上皮細胞に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体を活性化することで、腸の中に水分を引き込む薬です。

その仕組みは、GC-C受容体が活性化されると、腸管上皮細胞内のcGMP量が増加します。

cGMPがCFTR:嚢胞性繊維症膜貫通調節因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)を活性化することで、管腔内への腸液分泌が亢進し、腸管の動きが促進され排便が促されます。

リンゼス®️錠IFから抜粋

また、リナクロチドはストレスや大腸炎によって引き起こされる大腸痛覚過敏を抑制するため、腹部症状が強い便秘患者に有用で、便秘型過敏性腸症候群に適応があります。

エロビキシバット

エロビキシバットは胆汁酸トランスポーターを阻害し、腸管内の胆汁酸を増やすことで大腸の水分分泌や運動を促進し排便を促します。

グーフィス®️錠総合製品情報から抜粋
胆汁酸とは?

胆汁酸は肝臓で合成され胆嚢で貯蔵される物質です。
食事により胆管から十二指腸へ分泌された胆汁酸は腸管循環で小腸から約95%が再吸収されます。

胆汁酸は大腸管腔内への水と電解質の分泌を促したり、腸蠕動を亢進させたりするため食事の消化・吸収に関係します。

比較

用法用量

用法用量
  • ルビプロストン 1日2回 食後 1回24μg
  • リナクロチド 1日1回 食前 1回0.5mg
  • エロビキシバット 1日1回 食前 1回10mg

食後と食前に服用する薬がありややこしいですね。

それぞれ理由があるので解説します。

ルビプロストンは空腹時に服用すると悪心が出る可能性があります。また、肝機能障害や腎機能障害がある場合は1日1回へ服用回数を減らすように推奨されています。

リナクロチドは食後に服用すると下痢になる可能性があります。ですが、効果増強目的であえて食後に服用する場合もあります(適応外使用です)。

エロビキシバットは食事の刺激により分泌される胆汁酸の再吸収を阻害することで便秘を改善する薬です。食事によって胆汁酸が分泌される前に服用することで、エロビキシバットが効果的に作用する状態となり、便秘の改善効果が高まります。

効能効果

効能効果
  • ルビプロストン 慢性便秘症
  • リナクロチド 慢性便秘症 便秘型過敏性腸症候群
  • エロビキシバット 慢性便秘症

3剤とも慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)に適応がありますが、リナクロチドのみ便秘型過敏性腸症候群にも適応があります。

過敏性腸症候群(IBS)は特に原因がなく、腹痛や腹部不快感、便通異常などが出現する消化管疾患です。致死的な疾患ではありませんが、日常生活に支障が出て生活の質(QOL)に影響を与える疾患です。IBSは便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4つのタイプに分類され、リナクロチドは便秘型に対して適応をもつ薬です。

併用薬

ルビプロストンとリナクロチドには併用注意薬がありません。

エロビキシバットにはいくつか併用注意薬がありますので、使用するときには注意が必要です。

エロビキシバット併用注意

胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸など)
胆汁酸トランスポーター阻害による併用薬の作用減弱

アルミニウム含有製剤(スクラルファートなど)、コレスチラミンコレスチミド
併用薬が胆汁酸を吸着するためエロビキシバットの作用減弱

ジゴキシンダビガトラン
P-糖蛋白阻害作用による併用薬の作用増強

ミダゾラム
機序は不明だが併用薬の作用減弱

まとめ

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回の記事のまとめです。

まとめ
  • ルビプロストンとリナクロチドは上皮機能変容薬、エロビキシバットは胆汁酸トランスポーター阻害薬
  • 上皮機能変容薬は腸管の水分の通り道を活性化させて、腸管に水分を引き込むことで便秘を解消
  • 胆汁酸トランスポーター阻害薬は胆汁酸の再取り込みを阻害し、腸管内に水分を引き込んだり腸の動きを活発化させ便秘を解消
  • ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを処方されて場合は、用法用量・適応症・併用薬に注意

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